コックスバザール出張でアユーブ・バッチューのコンサート観ただけかい、そりゃけしからん、といわれてしまいそうなので、一応言っておきますと、ちゃんと仕事もしたんです。
ミャンマーと国境を接するコックス・バザール県には、迫害を恐れてバングラデシュに逃げ出してきたロヒンギャ族というミャンマー人イスラム教徒の人々がいます。一時は数十万人が難民としてバングラデシュに庇護を求め、その後国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の協力によりその大半がミャンマー側に帰還を果たしました。しかしながら、未だ種々の理由で帰れない2万人以上の難民がUNHCRの難民キャンプに残っており、もうかれこれ十数年もキャンプ生活が続いているのです。
日本を含め、多くのドナー国・機関が、UNHCRやそのパートナー機関を通じ、難民の保護のみならず、尊厳ある帰還に向けた協力をおこなっていますが、この10年ほど、この送還活動は壁にぶつかっております。
やはり、残っている人々はそれなりに帰れない理由があって、かつて反ミャンマー政府活動に従事していた、とか、帰れば迫害されたり、困難に直面する可能性が高い人々なのであります。彼らを庇護しているバングラデシュ政府も、彼らの定住を認めれば、今後ミャンマーからの更なる難民の流入を食い止めることができなくなることを恐れていますから、結果として難民達は、バングラデシュ政府からは最低限の行政支援を与えられる以外には、たとえば高等教育も受けられませんし、現金収入を得られる仕事をすることもままなりません。
そうしている十数年の間にも、新しい命は生まれてきます。親たちの事情とは関係なく、ここで生まれた子供達は、学齢期に達します。そして、帰れるめども立たず、将来のための教育を得るチャンスも得られない、という状況に直面するのです。NGO等の支援はありますが、キャンプ内の医療・衛生事情は決してよいものではありません。出産がうまくいかなかったり、新生児が感染症で苦しんだりもするようです。
また、新生児だけではありません。難民認定を受けていないいわゆる「経済難民」的なロヒンギャ族も多数流入しています。その人々は、こうした国際機関の支援すら受けられません。
女性たちはさらにつらい状況にあります。ベンガル人社会では女性たちは、現金収入を得られる仕事に従事することもでき、社会に参加する機会を着実に獲得してきていますが、難民キャンプの中では、女性たちの立場は弱く、しばしば家庭内暴力の犠牲となったりもします。
ロヒンギャ難民キャンプを訪れたのは、これが約10年ぶりなんですが、10年前には、女性たちはみな小屋の中にこもっていて、扉の影から珍しい外国人であるボクを見ているような感じでした。今回、世界難民デーのイベントは、キャンプの女性たちが「初めて」家の外でみんなでお菓子作りをしたのです。ほんとに楽しそうでした。
これまでの政党政府は、ロヒンギャ難民の問題に対し、若干冷淡でありました。現下の選挙管理内閣は、この問題に比較的積極的に対応してくれています。ここ1年半がチャンスかもしれません。この世界難民デーイベントが、多くの人々にとってこの問題を知る契機となればよいな、と思っております。
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