ベンガル地方は魚料理で有名ですが、中でもベンガル人に最も好まれる魚が、ニシン科の魚「イリシュ(ilish)」です。「ヒルサ(hilsa)」とも呼ばれます。同じベンガル地方でも特にバングラデシュで豊富に獲れ、安く手に入ると言われます。
たまたま我家にインド西ベンガル州からのお客さんが逗留しており、「バングラデシュではイリシュがたくさん取れるそうね」と言うので、さっそく今晩の夕食はイリシュのカレーにしました。もっとも、イリシュが豊富に取れるシーズンは雨季であり、今の時期(12月)ではあまりサイズの大きなものもないのですが、割と肉付きの良いものが手に入りました。
写真は、イリシュを使った最もポピュラーな料理、「ソルセ・イリシュ」です。「ソルセ」とは「マスタード」のことで、からしの種をすりつぶしてソースとして使います。
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イリシュの味は、日本の魚に例えれば、「太った秋刀魚」といった感じでしょうか。雨季のイリシュは脂がのっていてサイズも大きく、深い味わいがあります。この「ソルセ・イリシュ」のような魚カレーとしての調理のみならず、ソテーや塩焼きなどでもおいしくいただけます。通は、ただ茹でただけのイリシュの身をほぐして白ご飯にまぜて食べたりもします。
ただ、この魚は、バングラデシュの他の多くの川魚同様小骨がとても多く、お子さんが食べるのには向かないかも知れません。指やフォークで上手に粗骨をとり、残った小骨を口から上品に取り出す、一連の所作がキレイに決まると、ベンガル食通クラブのメンバーとして認められるのでしょうが、ベンガル歴10年余のボクも未だこの域に達しえておりません。
魚を上手に食べることが、ベンガル食通界の仲間入りをするための必修科目であり、その最終試験問題が、このベンガルの代表的な魚であるイリシュを首尾よく骨だけの状態にすることであるといえます。この試験をパスしなければ、ベンガル食通界の最高の栄誉である、「魚の頭」を頂戴することはできません。
え、意味がわからない?・・・解説します。
ベンガル人たちのあるパーティーに呼ばれたとします。ビュッフェではなくシッティングのディナーです。メインディッシュは尾頭付きのイリシュ。大きなイリシュが人数分切り分けられます。そのとき、頭の部分は通常最も尊敬すべき相手に対し与えられます。ただし、日本における兜煮同様、魚の頭を好む、ないし上手に食べる人はベンガル人といえど多数派ではなく、やはり魚の真の味を知る「通」のみとされています。したがって、数多いるゲストの中で唯一頭の部分を与えられる人は、「食通」としての栄誉を得る、ということなのです。
ただし!生兵法はケガのもと。よしんば首尾よく「魚の頭」を与えられたとして、もし上手に食べられなければ、あなたの「食通」としての信用は地に堕ちます。かくいうボクも、フォーマルな席で魚の頭をすすめられても、やはり、上手に食べられないことを思うとなかなかお受けできません。
確かに、魚の目の周りと頬のあたりの肉は、柔らかくて味わい深く、とてもおいしいです。あまりフォーマルでない席で何度か練習してみられることをお勧めします。私も先日の御呼ばれで練習してきたばかりです。
ただ、御呼ばれで、いきなり魚の頭をよこせ、と連呼するのも、吉野家で「つゆだく」を連呼するおのぼりさんみたいで、「ホントに君は魚の頭(又は「つゆだく」)が食べたいのか?それとも、ただ言ってみたいだけなのか?」と思われちゃいますね。そこはやはり節度をもって、まず魚のお味を楽しみましょう。そのうちきっとあなたにも、ベンガル食通クラブからの招待状が来ますよ。
(注: お分かりだとは思いますが、「ベンガル食通クラブ」なるものは実在しません。いや、実はどっかにあるのかも・・・)



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